先日、たまたま雑誌を見ていた際に、ドイツ・オーストリアではビオ・ホテルなるものがあるという記述を発見。折角ドイツ・欧州にいるなら、その地でできることを、と思い、検索してみることにした。
夏休みにオーストリアのシュタイアマルク州へ行く案が浮上した際、中継地点として「Feisterhof(ファイスターホフ)」というビオ・ホテルを見つけた。ホテルのウェブサイトを確認すると、写真の印象が非常に良かったため、2泊3日で予約を取ることに。
今回は、似て非なる隣国・オーストリアにおけるビオ・ホテル宿泊体験について記録しておきたい。

ホテルのある地域は「ダッハシュタイン」と呼ばれ、冬はスキー、夏は登山客で賑わう、自然に囲まれた観光地である。
自然と共に暮らすオーストリア人
オーストリア人はドイツ人と似ていると思われがちであるが、実際に現地で両者に接してみると、大きな違いが感じられる。
たとえば、食文化。ドイツでは、食への関心が比較的薄く、どちらかといえば価格重視の傾向が強い。味や質へのこだわりは後回しになることが多く、日本のようなグルメ文化とは一線を画している。日本で育った者にとっては、これはなかなかのカルチャーショックである。
一方、オーストリアはハプスブルク帝国の伝統も影響してか、料理や食材に対する誇りが強く、美的センスやこだわりもドイツに比べて高い印象を受けた。さらに、地理的にイタリアに近いためか、オーストリア人にはラテン的な大らかさが感じられる。

実際に、ダッハシュタインへ向かう前に立ち寄ったヴォルフガング湖(Wolfgangsee)やモントゼー(Mondsee)では、レストランやカフェの人々の対応が非常に穏やかで、居心地が良かった。
ドイツでは近年の社会・経済的な不安の影響もあってか、どこか悲観的な空気が漂っているのが対照的である。
そして何より、オーストリア人はドイツ人以上に「自然と共に生きている」という感覚が強く伝わってくる。旅の途中で口にした料理には、自家菜園の野菜、地元で育てられた家畜、ハーブや果物など、自然の恵みが豊富に使われていた。素朴ながらも、素材の味わいがしっかりと生きていた。
ビオ・ホテルとは何なのか?
2001年以降、ヨーロッパでは「ビオ・ホテル協会(Bio Hotels)」という組織が、エコで持続可能な運営を行うホテルに対し、認定制度を設けている。認定ホテルは欧州全体で50軒のみ。そのうちドイツが22軒、オーストリアが12軒で、両国だけで過半数を占めている。
ただし、認定を受けていなくても「ビオ・ホテル」と名乗ることは可能であり、今回宿泊したホテルも、いわゆる“自称ビオ・ホテル”であった。
朝食・夕食付きのプランを選び、一泊あたりの料金は一人約100ユーロ。部屋の窓からは雄大な山々が望め、眺めているだけで心が安らぐ。
料理に使用されている食材はすべてビオ認証を受けており、特に肉類は併設の農場で育てられた家畜のものを使用していた。朝食では、手作りのジャムや果物のコンポートが並び、自然の風味をそのまま楽しめた。


ただし、夕食は期待外れであった。味付けが過剰に濃く、素材の新鮮さにも欠けていた印象がある。この地域では、本来なら地元産の野菜、ハーブ、果物、肉、乳製品などが豊富に手に入るはずである。しかし、付け合わせの野菜はおそらく冷凍品であり、正直なところ落胆した。

その前に滞在していたシュタイアーマルク州南部では、ビオ認証の有無は不明ながらも、素材を生かした料理が多く、非常に満足度が高かった。それゆえ、今回の夕食には過度に期待してしまっていたのかもしれない。
ホテルでは、多忙な日常から距離を置き、ゆったりとした時間を過ごすことをモットーに、ブックコーナーが設けられている。本とワインを片手に、雄大な景色を見ながら、ゆったりとした時間を過ごすのも良いかもしれない。

シュタイアーマルク州の特産品
オーストリアの南シュタイアーマルク州は、ワインの産地として知られているが、それと並んでパンプキンシードオイル(かぼちゃの種油)でも有名である。

このオイルは加熱には適しておらず、主にサラダやマリネ、スープのトッピングなど、生の状態で使用するのが一般的である。
ナッツのような香ばしい風味が特徴で、アイスクリームにかけてデザートとして楽しむのも面白い。これが意外なほど美味い。

なお、南シュタイアーマルク州のパンプキンシードオイルは、同州の地理的表示保護製品(GPI)に認定されており、日EU間で保護対象となっている。つまり、この名称を表示できるのは、厳格な基準を満たした製品のみである。
同州は風景も美しく、ワインの名産地でもあることから、ハイキングの途中に地元ワインとともにパンプキンシードオイルを使った料理を味わうのも、この地域ならではの楽しみ方である。

美味しい料理を目指して、ワイン畑に囲まれながらハイキングするのはとても気持ちがよくおすすめです!ただし、平日は閉店しているレストランが多いので注意が必要。
今回は、こちらのショップでパンプキンシードオイルを購入した。過去にGault&Millauの賞を受賞したこともあるこちらのパンプキンシードオイルだが、とても美味しかったので、ぜひオンラインショップを覗いてみていただきたい。
まとめ
オーストリアの大自然を満喫できた今回の旅。完全にエコな旅とは言えないが、オーストリア人の素朴な暮らしから学べることは多く、大自然の中で時間を過ごしていると、それだけで幸せな気分に浸ることができた。
エコやビオ、持続可能な旅に関心がある方は、ドイツやオーストリアのビオ・ホテルを訪れてみてはいかがだろうか。
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