ドイツでは11月末から、アドベントと呼ばれる「クリスマスを待ち望む4週間」が始まる。蝋燭に火を灯し、クッキーやシュトレンを焼きながら少しずつ準備を進め、街も家の中も一気にクリスマスモードへと変わっていく。

本番はもちろん12月24日からの数日間だが、どんなものを食べるか、どんなふうに過ごすかは本当に家庭によって様々だ。日本で暮らしていた頃の「クリスマス」とはかなり違っていて、その違いを観察するのが私はとても好きだ。
今回は、その一例として、夫の実家があるドイツ南西部・プファルツ地方でのクリスマスの過ごし方を紹介したい。
クリスマスプレゼントという永遠の悩み
ここ数年、私たち夫婦の頭を悩ませているのが、クリスマスプレゼント選びだ。甥っ子は12歳と10歳。とてもかわいいのだが、とにかく物にあふれた生活をしている。新しいおもちゃやゲームをあげても、未開封のまま棚の奥へ……というパターンが少なくない。
義姉も同じような感じで、「もうこれ以上増やさなくてもいいのでは」と内心思ってしまうほどだ。
私たち夫婦は「プレゼントはなくてもいい派」。正直なところ、物よりも一緒に楽しい時間を過ごせればそれで十分だと思っている。必要のないものをお互いに贈り合うくらいなら、いっそプレゼントなしでもいいのでは……とすら感じているのだが、毎年そうもいかないのが現実である。
今年はあれこれ悩んだ結果、物より「体験」と「消えもの」を中心にすることにした。
- 一緒にディズニー映画『ズートピア』を観に行く招待状
- お菓子類の食べ物
- マリオとマインクラフトの靴下
- 義姉にはジグソーパズル
日常的に使えるものやお腹の中に消えていくものなら、お蔵入りする可能性も少ないし、贈る側としても後ろめたさがない。私たちなりにたどり着いた、妥協点のようなプレゼントである。

「クリスマスイブは質素」が普通?驚きの夕食メニュー
ドイツで最初に迎えたクリスマスで、私がいちばん驚いたのは、クリスマスイブの夕食がとても質素なことだったこと。
夫の実家の24日のメニューは、大体ジャガイモのサラダとソーセージ。以上、である。今年は、ソーセージの代わりに鱒を食べた。
「クリスマスといえばご馳走」と思っていた私には衝撃的だった。日本だと、家でローストチキンやケーキを用意したり、恋人と少し特別なディナーを楽しんだりするイメージが強い。

クリスマスのラジオ番組では、なぜ日本人はKFCをクリスマスに食べるのか?という特集が流れていました。国によって祝い方も異なるので面白いですね。
調べてみると、これはドイツではごく一般的な習慣だそうだ。25日以降のご馳走に備え、24日は簡単で手のかからない食事で済ませる、という考え方らしい。
義姉のパートナーはスペイン人なのだが、彼も初めてこのメニューを見たときは、「えっ、なぜソーセージとポテトサラダだけ?」と私と同じ反応をしていた。とはいえ、「郷に入っては郷に従え」。今ではすっかり見慣れたメニューとなった。
オーストリア風の厄除けと、プレゼント開封タイム
24日の夕食が終わると、お待ちかねのプレゼント開封タイムがやってくる。
ただ、その前にもうひとつ小さな儀式がある。義母はオーストリア出身で、オーストリアの風習に従い、Weihrauch と呼ばれるお香を焚いて、家の中を清めるのだ。ゆっくりと立ちのぼる煙には、厄除けの意味が込められているという。
この Weihrauch は日本語では乳香と翻訳されており、樹脂から精製されるお香なのだが、とてもやさしい香りだ。冬の寒い夜に蝋燭の灯りのそばで焚くと、不思議と気持ちも落ち着いてくる。クリスマスマーケットや専門店でも手に入るので、興味のある方にはぜひ一度試してみてほしい。
部屋いっぱいにやわらかな香りが広がったら、いよいよプレゼントの山を囲む時間。子どもたちは待ちきれずにずっとソワソワしている。
25日、26日は日本のお正月のような雰囲気
25日以降の過ごし方は家庭によって違うと思うが、夫の実家ではだいたいこんな感じだ。
- ラクレット
- 鱒などのお魚料理
- ガチョウや鴨のロースト
食後はのんびりとボードゲームをしたり、近くの森へ散歩に出かけたり、ジグソーパズルを広げてみんなで少しずつ進めたり。日本のお正月を連想させるような、「家族でだらだらしながら過ごす、特別な連休」という雰囲気だ。

ドイツでは25日と26日も祝日で、お店は基本的に閉まっている。その静けさもまた、日本の正月三が日の感覚に少し似ている。

夫の実家はプファルツの森の近くにあり、周りは一面自然に囲まれている。普段はミュンヘンの街中で暮らしていることもあり、自然の中での散歩は私にとって、帰省時の大きな楽しみのひとつになっている。
27日頃になると、少しずつ日常が戻ってくる。地元の友人たちと会ったり、仕事がある人は大晦日まで出勤したりと、街も年末に向けてゆっくりとまた活気づいていく。去年と一昨年は、フランスのアルザス地方に1泊2日で出かけた。ドイツとは異なり、美味しいものがたくさん売っているので、小旅行にはちょうど良い。
環境意識が高くても、クリスマスは別?
ドイツといえば「環境への意識が高い国」というイメージがあるかもしれない。実際、リサイクルや省エネについては、とても徹底していると感じる。
ところが、クリスマスと年越しだけは、話が少し変わってくる。
普段は「オフィスの電気も必要最低限」という人たちが、クリスマスシーズンになると、ここぞとばかりにイルミネーションで家や街を輝かせる。さらに、クリスマスツリーには本物のモミの木を選ぶ家庭が多く、お正月明けには、役目を終えた木が無惨に路上に積み上げられている光景をあちこちで目にする。
そんな中で、義母のスタイルは少しユニークだ。彼女は「ちょっと面倒くさがりさん」なので、本物のクリスマスツリーは置かない。その代わり、モミの木の形をした照明をひとつ、リビングに出している。
しかも、それを片付けるのも面倒なので、なんと一年中そのまま。イースターの時期には卵やウサギの飾りをつけ、クリスマスが近づくとクリスマス用のオーナメントに付け替える。環境のため、というよりは「楽だから」という理由らしいが、結果的にツリーを買って捨てる必要もなく、ゴミはほとんど出ない。
ラッピングも最低限にしているが、それでも十分にクリスマス気分は味わえるし、私の中ではすっかり「ドイツのクリスマス=義母の家のこのスタイル」というイメージが定着してきた。
風情があるかどうかは人によるかもしれないが、こうした斬新なクリスマスのあり方も、私はけっこう気に入っている。
おわりに
アドベントの静かな灯りから始まり、質素なイブの夕食、25日・26日のご馳走と家族の時間、そしてちょっと不器用だけれど合理的な環境配慮まで。
同じ「クリスマス」という行事でも、日本で育った私の感覚とは違うところがたくさんあって、そのギャップを毎年おもしろく眺めている。
ドイツのクリスマスにも、地域ごと・家庭ごとに無数のスタイルがある。その中の一つとして、プファルツで過ごす、わが家のささやかなクリスマスの風景を、少しでも感じてもらえたら嬉しい。
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