ドイツの都市といえば、ミュンヘンやフランクフルト、ハンブルクなど西側の大都市を思い浮かべる人が多いかもしれない。けれども、私は東ドイツの街にこそ、静かな魅力が宿っていると思う。今回、会議のために3日間滞在したエアフルトでの体験を紹介したい。
東ドイツのイメージと実際
近年、旧東独地域は外国人排斥的な動きとともに語られることがあり、ドイツ国内でもネガティブな印象を抱く人は少なくない。しかし、実際に訪れてみると、アジア人の外見に対して心ない言葉をかけられる場面はほとんどなかった。もちろん地方の小さな町では事情が異なる可能性はあるが、ドレスデン、ライプツィヒ、エアフルト、ワイマールといった主要都市なら、安心して観光を楽しむことができる。
エアフルトとはどんな街?
エアフルトはミュンヘンから電車で2時間半〜3時間。ベルリンとミュンヘンのほぼ中間に位置し、テューリンゲン州の州都でもある。人口はワイマールなどの周辺都市も含めて約50万人と小規模だが、文化や歴史の厚みがある地域だ。

近隣のイェナには光学メーカー「ツァイス」が本社を構え、ドイツでも有数の光学・フォトニクスの中心地として知られる。また、18世紀後半〜19世紀初頭にはドイツ・ロマン主義の拠点として多くの文学者や思想家が集った。エアフルト、ワイマール、イェナは、ドイツ文学に関心のある人には特におすすめのエリアだ。
静けさが心地よい旧市街
中央駅から路面電車で10分ほどで旧市街に着く。コンパクトで歩きやすく、観光客が多すぎないためとても静か。街並みを眺めながら散歩するだけで心が和む。

大聖堂の前には、クリスマスマーケットの観覧車が早くも設置されており、広場全体がどこかお祭り前の空気に包まれていた。
そして、街の象徴ともいえるクレーマー橋。橋の上に小さなお店が連なっていて、歩くだけでも楽しい。その中でも特におすすめしたいのが、手作りプラリーネで人気のチョコレート店 Goldheim。

外側のビターなチョコレートと、種類豊富なフィリングの甘さのバランスが絶妙だ。私のお気に入りはブルーベリーとトンカ豆のプラリーネ。トンカ豆はバニラに似た香りを持ち、カスタードやアイスにも使われる香り豊かな食材だ。

お店のパッケージデザインがとても可愛いのも魅力的で、オーナーの Alex Kuhen 氏が自ら手掛けていると聞き、才能の幅に思わず感心してしまった。

旧市街を抜けて路面電車で少し進むと、旧東独時代の集合住宅「プラッテンバウ」が今も残っている地区がある。ところどころに空き店舗も見られ、どこか物寂しい雰囲気が漂っていた。西側の人々が「旧東ドイツ」と聞いて思い浮かべるイメージは、こうした風景から来ているのかもしれない。
テューリンゲンといえば郷土料理理
テューリンゲン州といえば外せないのが、テューリンゲン・ソーセージとジャガイモ団子だ。
普通のソーセージと何が違うのか調べてみたところ、テューリンゲン・ソーセージは15~20cmほどと細長く、クミンやマジョラムが効いた香り高い味わいが特徴とのこと。街の至るところで目にするし、クリスマスマーケットでも見かけるので、ぜひお試しあれ。ジャガイモ団子はドイツ各地にあるが、この地域のものは中に香ばしく焼いたクルトンが入っているのが特徴だ。
さらに伝統的な料理としては、薄い牛肉でピクルスやベーコンを巻いて煮込む「ルーラーデン」がある。ボリュームは程よく、日本人でも食べやすい。

今回は、Zum güldenen Rade(黄金の車輪)というお店にお邪魔した。店員さんもフレンドリーで、ご飯も美味しくおすすめだ。ボリュームはかなり大きいので、二人でシェアしても良いかもしれない。また、軽めの食事として、ジャガイモ団子のみ(中の具材にバリエーションあり)のメニューもある。
小さな街の魅力をゆっくり味わう旅へ
気づけば食べ物の話が多くなってしまったが、私が東ドイツの小都市を好きな理由は、こうしたぶらぶら散歩して、文化施設に行ったり、美味しいものを食べるというシンプルな喜びを存分に味わえるからだ。西側の大都市に比べれば物価も少し控えめで、滞在しやすい。
クリスマスマーケットが始まれば、旧市街の街並みがイルミネーションに照らされ、さらにその魅力が増す。ワイマールなど周辺都市と合わせて巡るのもおすすめだ。
旧東独地域には依然として偏見がつきまとう場面もあるが、実際に訪れてみると、そこには温かい日常と豊かな文化が息づいている。ぜひ自分の目で確かめ、その静かな魅力を感じ取ってほしい。
下記のドイツ情報ブログ⇩バナーをクリックして応援していただけると嬉しいです!



