ドイツ生活5年目、日本人として感じること

日々の生活

前回のドイツの経済状況に関する記事の中では、少し悲観的な見方をお伝えした。今日は、ドイツで外国人として暮らす現実について、現地で感じることをまとめてみたい。他の欧州各国と比べると住みやすいという声が多く聞かれるが、その理由について迫りたい。

ビザが取りやすい

これは昔から言われていることだが、イギリスやフランスなど、他の欧州主要国と比べると、どうやらドイツはビザが取りやすい国のようだ。特に、個人事業主としてのビザが取得しやすいという情報をよく目にする。

もちろん都市によって、外国人局の対応が悪く、ビザの発給が遅れる、いちゃもんをつけられる、というケースも多くある。

ただ、ビザの取りやすさを理由に、ドイツへ移住してきた日本人の方々に幾度となく遭遇してきたことを見ても、比較的日本人が滞在しやすい国であると言える。

ビザに加えて、生活をしやすい環境と言えるのが、ドイツでは主要都市であれば大体英語が通じるということ。私の友人(中国人)の妹さんは、バルセロナで研究をしているのだが、英語を話せる人が身近におらず、彼女はスペイン語がほぼ理解できないので、苦労している、という話をしていた。

フランスも、フランス語が基本的には必要となるであろうし、イタリアでも、英語はあまり通じなかったりする。そう考えるとドイツでは、ドイツ語ができなくても何とかやっていける国だと言えるだろう。

ナマケモノ
ナマケモノ

特にベルリンでは、お店の店員さんが英語しか喋れない、ということも結構あります。

インフレとは言え、比較的安価な生活費

前回の記事と少し矛盾するかもしれないが、インフレで値段が上がっているとは言え、他の西欧諸国と比べれば、生活用品や食材は比較的安い。

我が家も、基本的には一人あたり月450€(日本円で6万〜7万円程度)で日用品・食材・雑費をカバーできている。出費の多くは家賃といっても過言ではない。

夫がアメリカに住む親戚に、我が家の毎月の貯金額を教えたら、その収入でその貯金額はアメリカではあり得ない!と驚きを隠せない様子だった。

教育機関・文化施設も、国の補助を受けているので、安価な入場料・受講費で楽しむことができる。例えば、ミュンヘンの有名な美術館であるピナコテークでは毎月1週目の日曜日は、1€で入場することができる。

このほか、日本の生涯学習センターのような役割を果たすVolkshochschule。語学の講座から芸術系の講座、キャリアアップのための単発講座などを安価で受講することができる。著者も最近、スケッチのコースや、週末に単発の料理講座などを受講したが、どれも値段以上のクオリティで大満足だった。

タイ料理の講座に行った際の完成品

オペラやコンサートなどの芸術関係のイベントも、日本と比べれば比較的安価にチケットを購入することができる。また、通常のチケットを購入するお金がない時には、Abendkasseで当日券を安く購入することもできる。

日本のように娯楽施設が充実しているわけではないが、文化施設はお手頃に楽しめるというのがドイツ生活の良いところかもしれない。

表立った差別は少ない

これは生活する環境や都市によるのかもしれないが、外国人への表立った差別というのは、比較的少ないというのが印象だ。数年前には、東ドイツで外国人排斥運動が起きていたが、これらはどちらかというと、現状の生活に対する不満が外国人敵視に繋がっているということだと思う。そのため、差別とは異なると個人的には考えている。

極右のネオナチなどに遭遇しない限り、外国人の容姿だからといって攻撃される、ということは、幸いにもこれまで経験したことがない。もちろん、多少意地悪なことを言われたり、軽く見られたりすることはあるが、これは恐らくどこの国でもそうだろう。

ザクセン州の州都、ドレスデン

外国人だからといって軽く扱われないように、声を大きく張り上げたり、ドイツ語・英語できちんと自分の立場を守る必要は当然ある。そのため、気疲れする、というのはあるかもしれない。

老朽化していても、一応インフラはちゃんとしている

ドイツでのインフラの老朽化が最近話題となっている。昨年も、ドレスデンという東部の街の中心部で、突然市内の橋が崩れ落ちて、大きなニュースとなった。たまたま、路面電車や歩行者のいない時間帯に起きた出来事だったので、大惨事を免れていたが、昼間の時間帯だったらと思うとゾッとする。

ドレスデン中心部

こういった問題は最近増えつつあるのは事実だが、それでも、インフラはそれなりにしっかりしているという印象だ。空港、鉄道(遅れは酷いが、運行している)、高速道路はそれなりに機能している。日本とは比べ物にはならないが、欧州内で比較をすれば、ドイツのインフラの安定性は上位に位置するだろう。

昔、ポルトガルに留学していた友人がドイツに遊びに来てくれた際に、ドイツの電車の綺麗さに感激していた。私はドイツの鉄道ですら、ちょっと汚いと感じてしまうので、びっくりしたのを覚えている。

日本食の豊富さ、日本へのアクセス

デュッセルドルフという街は、ドイツ随一の日本人コミュニティーが存在する街である。欧州でもロンドンに次いで日本人が多い街として知られている。デュッセルドルフ中央駅から旧市街に向かう道Immermann通りには、日本のレストランやお店が多く並んでいる。

お昼に定食屋さんに行けば、サラリーマンの姿で溢れており、「ここはどこだっけ?」と思うほどだ。大都市であれば、日本食レストランは数軒あるが、デュッセルドルフはレベルが違う。

著者も昔、デュッセルドルフに住んでいたことがあるが、ドイツにいながら日本みたいな生活ができる、贅沢な環境だった。

恵光寺というお寺もあり、日本を感じられる

そして、日本へのアクセスも、海外にいるときは重要になる。ドイツでは、ミュンヘン、フランクフルトから直行便が頻繁に出ている。昔はデュッセルドルフ直行便もあったのだが、コロナの影響で廃止になってしまったようだ。

まとめ

ドイツで外国人として暮らすには、もちろん語学や文化の壁、制度の違いなど乗り越えるべき点も多い。ただ、その一方で、他の欧州諸国に比べれば生活のしやすさや環境の良さが際立っているのも事実である。昨今の経済情勢を除けば、日本人が住むには安定した国であると言えるかもしれない。